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朝日新聞・天声人語 平成二十五年(一月)

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发表于 2013-1-1 16:25:42 |显示全部楼层
2013年1月1日(火)付
 大晦日(おおみそか)の深夜から元日の早朝にかけて、時間の流れは魔法のようだ。さっきまでざわついていた年の瀬の空気が、数時間眠って目覚めれば、静かにひきしまっている。年あらたまる和やかな朝は、いくつ歳(とし)を重ねてもありがたい▼思えば暮れから新春への10日間ばかり、私たちは毎年、不思議な時空を通り抜ける。師走の25日まで、街はクリスマス一色に染まる。それが、あくる日からは、ものの見事に迎春モードに一変する▼ゆうべの除夜の鐘で百八煩悩を消し去って、きょうは神社で清々(すがすが)しく柏手(かしわで)を打つ。キリスト教に始まって仏教から神道へ。いつもの流れに身をゆだね、この国の年は暮れ、年は明ける▼日本海側は大雪の正月になった。三が日に降る雪や雨を「御降(おさがり)」と言う。めでたい日の生憎(あいにく)の空模様を、ご先祖は天からの授かりものとして美しく言い換えてきた。言葉に宿る霊力が幸をもたらすと信じた民族ならではだろう▼そんな「言霊(ことだま)の幸(さきわ)う国」は3種の文字を持ち、ゆえに三つの幸福がある。「幸せ」と「しあわせ」と「シアワセ」は同じようで微妙に違う。たとえるなら、「シアワセ」は冷えた五臓に熱燗(あつかん)の一杯がじんわり広がるとき。「しあわせ」は赤ちゃんの寝顔に見入る父さん母さん、といったところ▼「幸せ」は人生航路の順風だろうか、漢字は構えが広い印象になる。一族再会、おみくじの大吉、雑煮の湯気……何でもいい、年の初めの幸を喜び、気分新たに歩み出したい。混迷の世であればこそ、なお。
2013年1月3日(木)付
 「日本の憲法は押しつけられた」「いや、そうではない」と戦後68年の今も論議は続く。その憲法の草案づくりに加わったベアテ・シロタ・ゴードンさんは、いつもこう語った。「日本の憲法はアメリカよりすばらしい」。そして憲法が日々の暮らしに根を張ることを願ってきた▼憲法24条は男女の平等をうたう。草案の人権小委員会の一員として22歳でそれを書いた彼女の訃報(ふほう)が、米国から届いた。89歳。ただ書いただけでなく、戦後の日本を見つめ続けた人だった▼戦前に一家で日本へ来た。少女時代を東京で過ごし、二・二六事件にも遭遇する。開戦前に単身渡米して学び、戦争が終わると、両親を捜すために連合国軍総司令部の要員に応募して日本に戻った▼憲法施行の年に離日したが、その後も訪日を重ねた。各地での講演は100回をゆうに超す。かつて同僚の取材に、草案を書いたことを「ちょうど私がそこにいただけ」と答えていた。さりげない言葉の向こうに、だれが書こうが平等は普遍の原理だという信念が感じられたものだ▼社会にも会社にも女性の力が求められて久しいのに、この国での進出は今もおぼつかない。企業や官庁に幹部は少なく、首長も議員も一握り。ある調査では男女の平等度は135カ国中の101位とお寒い限りだ▼ベアテさんの最後の言葉は、日本国憲法の平和条項と女性の権利を守ってほしい旨の願いだったという。元気を欠きがちなリベラルへのエールのように、それは聞こえてくる。
2013年1月4日(金)付
 同じことを見聞きしても、人によってまるで違うとらえ方をする。そんな愉快な作り話がある。ある企業が発展途上の地に靴の輸出を計画し、市場調査のために社員2人を派遣した。1人は「まったく見込みがありません。住民はだれも靴を履きません」と報告してきた▼もう1人はこう言ってきた。「無限の見込みがあります。住民はまだ誰も靴を持っていません」。『笑いのこころユーモアのセンス』(岩波書店)から拝借した話だが、2人が部下ならあなたはどちらを買うだろう▼市場調査に冷徹な分析は欠かせない。しかし後者の、悪くいえば能天気、良く言えば前向き思考は捨てがたい。今の日本に欲しいのは後者のような元気者では、などと思ってみる▼今年は巳(み)年。吠(ほ)える虎、跳ねる兎(うさぎ)、天翔(あまがけ)る竜、と続いたのに比べると、地を這(は)う蛇はいささか地味だ。届いた年賀状には「脱皮」を願う書き込みがいくつかあった。閉塞(へいそく)感から脱皮し、ひと皮むけて自分を高めるには、マイナス思考ではおぼつかない▼どこで聞いたか、おめでたい笑話を思い出す。「お前、ダイコン足だなあ」「あら、そんなに白い。うれしいな」。「それじゃゴボウ足だ」「ほんと。そんなにほっそりして長い?」。破格のおおらかさがいい▼今日が仕事始めで、休み明けの重い腰を上げる人もおられよう。視界は不良でも、ものごとを良い方に、明るい方にとらえる「力」をお互い鍛えたいものだ。笑みと活気と前向きを、この一年の道連れとして。
2013年1月5日(土)付
 冬の雑木林は枯れて寂れた風情だが、葉を落とすことで明るさを広げる。東京の西、いわゆる武蔵野を歩くと、裸になった木々が青い空に、粗い箒(ほうき)のような枝を突き刺している。色のとぼしい林間で、センリョウの赤い実と深い緑の葉の色が、目にひときわ鮮やかだ▼そんな東京の年明けが申し訳なくなるような、日本海側の大雪である。強い冬型と低気圧のために北海道では吹雪となり、青森の酸ケ湯(すかゆ)では積雪が3メートルを超えた。冬晴れの関東平野と背中合わせの新潟でも雪は深い▼東京も、寒いのは寒い。きのうの朝は拙宅のスイレン鉢に氷が張った。まだ暗い5時過ぎには水だったが、日の出の頃にはパリッと凍っていた。薄い氷を、透明なセミの羽に似ていることから「蝉氷(せみごおり)」と言う。もっとも蝉氷ぐらいで震えていては、北国の人に叱られそうだ▼きょうは二十四節気の小寒で、列島は寒の入りとなる。大寒をへて節分までを寒の内と呼び、1年で最も寒い時期とされる。風は冷たく、大気は凍(い)てる▼高村光太郎ふうに言えば「人にいやがられる、刃物のような冬」である。だが少し肩を持つなら、寒さは自然を引きしめ、人に自省の心をもたらしてくれる。寒稽古に寒参り、寒垢離(かんごり)……あえて寒中に行い精神の純化を求める風習がさまざまに残る▼〈きびきびと万物寒に入りにけり〉富安風生。とはいえ、着ぶくれて春を待つのもまた人間。寒くとも寒苦には至らず、吹雪(ふぶ)かず、雪崩(なだ)れず。程々の寒の内であってほしい。
2013年1月6日(日)付
 新春の株価が高いと、浮かれた気分になる。縁のない当方にしてこれだから、投資家は安倍晋三さんにお年玉をもらった思いだろう。ムード先行と侮るなかれ、景気を下から支えるのは気の字である▼金融緩和と積極財政に突き進む首相を、市場は潤んだ目で仰ぐ。衆院解散が決まり、政権交代が秒読みとなって以来の円安、株高。期待が先立つ安倍バブルに、米国の景気後退が遠のいた安心感が加わった▼日銀の首根っこを押さえてお金をあふれさせ、防災を理由に公共事業のタガを緩める。金融と財政で当座をしのぐ間に、規制緩和などで企業の投資を誘い、デフレを脱する――これが新政権の経済政策、世に言うアベノミクスらしい▼その成否は、暮らしへの波及で見極めたい。輸出企業や建設業者は一息ついたものの、国の借金がまた膨らみ、物価だけ上がって雇用や賃金はさっぱり、というのが最悪。「日本売り」を招きかねない▼とはいえ、立ちすくむ暇(いとま)はない。伊勢神宮に参拝した安倍首相は、巳年(みどし)にちなみ「蛇は商売繁盛のシンボル。経済再生にロケットスタートを切りたい」と語った。兜町の反応は「皮算用」が過ぎるとしても、脱皮を重ねる蛇には再生のイメージもある▼ここで流れが変わらないと、日本は衰退に向かうだろう。去年は貿易赤字、人口減が過去最大になったと聞く。どさくさ紛れに原発を動かされては困るが、頼れそうなものは総動員すべき時ではある。世の中の「気」はもちろん、干支(えと)も神仏も。
2013年1月7日(月)付
 近所の資源ごみ置き場に、和洋の酒瓶が山と積まれていた。わが家にも動かぬ証拠が10本ほど転がる。宴(うたげ)の果てといえば美しいが、中身の行方を思うと切ない。曜日の配列に恵まれた年末年始、飲み食いでふやけた向きは多かろう▼ご同輩、ひと区切りつけるなら本日の七草粥(がゆ)である。年をまたいで酷使した臓器をねぎらい、無病息災を願う。白地に緑は目にも優しく、罪滅ぼしの青菜は蕪(かぶ)か大根で足る。淡泊な甘みを確かめたら、つくだ煮など濃いめの味を添えてみたい▼作家の井上荒野(あれの)さんは独り暮らしを始めた頃、粥と煮魚で大人を自覚したという。残った煮汁にワカメをくぐらせ、白粥に盛る。「元気なときに食べてもおいしいものだとわかった」と、本紙「作家の口福(こうふく)」に記している▼そう、ごちそうはカニやマグロだけではない……と納得していたら、築地市場の初競りで大きな本マグロに1億5540万円がついた。キロ70万円、新春のご祝儀では説明できぬ相場らしい▼「マグロに高値がつくとワクワクするでしょう」。香港の同業に競り勝ったすしチェーン社長は、景気回復への思いを語った。宣伝の散財にしても華やぐ話題ではある。ただ、三が日の延長戦のような美食三昧(ざんまい)は、鉄の胃を持つ人にお任せしよう▼ささやかながら当方、空き瓶を転がして内需には貢献している。ここは大トロの誘惑に負けず、過日の飽食を反省したい。身に染みる朝粥のうまさは、いわば健康ゆえのぜいたく、ありがたいことである。
2013年1月8日(火)付
 昔、ある高僧のところへ年始に来た男が、何か書いて下さいと頼んだ。僧はさらさらと「親死に、子死に、孫死ぬ」と書きつけた。男が怒ると僧は静かに「親が死んでから子が死ぬ、子が死んでから孫が死ぬのがいいので、逆になったら大変なことだ」▼男は納得して大事に持ち帰ったそうだ。以上は国語学の故金田一春彦さんが書いていた話だが、その「逆」を招く最たるものは戦火だろう。「平和な時には子が父の葬(とむら)いをする。しかし戦いとなれば父が子を葬(ほうむ)らねばならぬ」と、これは古代の史家ヘロドトスの書中にある。いま真っ先に浮かぶのはシリアだ▼内戦の死者は6万人を超えたと、年明け早々に国連高官が発表した。これまでは推計で数万人としてきたが、詳細な検証を踏まえて初めて明確にした▼うち5万9648人を実名でリスト化できたそうだ。大勢の子らの名があるに違いない。その名で呼ばれた短い生涯、残された小さい墓を思えば胸は痛む。若者も多かろう。戦火はもうすぐ2年におよぶ▼発端は「アラブの春」だった。民主化要求を政府が力で押さえ込んだ。だが今や政府軍、反政府軍とも周辺国からの肩入れで戦っているようだ。イスラムの宗派が絡み合って、糸は容易に解けそうにない▼古今の独裁者の例にもれず、アサド大統領は自分が生き延びることしか頭にないらしい。そうするうちにも犠牲は膨らみ、幾十万の難民が流浪する。一刻も早い退陣しか、民衆に「平和な時」が戻る道はあるまいが。
2013年1月9日(水)付
 うっかりすると見逃しそうな小さな記事だった。5日付の国際面に「詩人の金芝河(キムジハ)氏39年ぶりに無罪」とあった。50代半ば以上の世代なら、ひとつの時代の象徴のように、その抵抗詩人の名を記憶している方も少なくあるまい▼韓国の体制に抗して繰り出す詩は、紙つぶてとなって権力者を撃った。よく知られる「五賊」は長編の風刺詩だ。財閥や国会議員、高級官僚、将軍らを国に巣くう五賊と呼び、〈夜昼のべつ盗みにはげみ、その技(わざ)これまた神技(かみわざ)の域〉(姜舜〈カンスン〉訳)などとこきおろした▼民主化運動の弾圧事件で1974年に死刑判決を受ける(のちに減刑)。この年にはソ連の反体制作家ソルジェニーツィン氏が国外追放されている。国家体制も状況も異なるが、2人の抵抗人の「良心」が様々に語られたものだ▼そのころの韓国は軍政下にあり、言論統制は厳しかった。たとえば新聞の場合、官憲が各社に常駐して記事を検閲したそうだ。真実を書くのに覚悟が求められた▼時は流れて金氏は無罪を勝ち取った。その報を読みつつ目を転じれば、中国で「言論の不自由」への抗議が湧き上がっている。南方週末という新聞の新年号が、当局の指示で違う紙面に変えられたという▼この抗議を人々の「良心」ととらえたい。言論の自由を欠いたままでは、中国は大国になっても成熟できまい。民衆の口を封じるのは川を止めるより危険――。いずれ不満が高じてあふれ出すからだが、政府が省みるべきそんな古言も、中国にはある。
2013年1月10日(木)付
 英国のロンドンで10年あまり前、子どもたち数百人がデモ行進をした。体罰反対を訴えるためで、首相あての手紙を渡して「愛の鞭(むち)は存在しない」などと訴えた。英国は学校での体罰が法律で禁じられた後も「鞭の復活」を求める声の多いお国柄だという▼鞭を許す空気は、17世紀に書かれたジョン・ロックの名高い「教育論」にさかのぼるそうだ。ロックは体罰を強く戒めている。しかし完全に否(いな)とはせず、ごく限られた場合には認めた▼「叩(たた)くことは子の矯正に用いられる最悪の、したがって最後の手段である」と述べている。体罰は無論排されるべきだが、ロックの言葉がある種の同意を誘うのも、一方の事実なのだろう。体罰は古くて新しい問題として、私たちの前に立ち現れる▼だが、そうだとしても、今回の大阪の件は論外だ。高校バスケットボール部の顧問教諭から体罰を受けていた17歳の男子が自ら命を絶った。常態化していたらしく、顔をはらして帰宅していたという。指導ではなく最悪の暴力にすぎない▼体罰の情報はあったという。だが学校側は教諭本人に聴いて「体罰はない」と判断していた。子どもでも分かるおざなりに呆(あき)れる。どうしていつもこうなのか。悔いても謝っても消えた命は戻ってこない▼体罰に「いい体罰」も「悪い体罰」もない。ロックには敬意を表しつつ、あくまで恐怖と身体的な苦痛なしで子らを育て、導く「覚悟と決意」が大人に必要だ。いま一度あらため、固め直すときではないか。
2013年1月11日(金)付
 「弘法筆を選ばず」と言うけれど、能筆で知られる弘法大師は、実際はよく筆を選んで使い分けたようだ。残した一文の中に「能書は好筆を用ふ」とあって、使う筆を細かく説いているそうだ。筆を選ばず、は神格化された人ならではの俗諺(ぞくげん)らしい▼そして、こちらも書の世界では神のような人である。4世紀中国の王羲之(おうぎし)は「書聖」と呼ばれ古今随一の書家とされる。名のみ知られて真筆は一つも現存しない、書道史上の伝説の巨人だ▼その作品の精巧な模本(写し)が、先ごろ日本で見つかった。良質な模本は世界でも10点前後しかないといい、専門家らは「世紀の発見」と興奮さめやらない。遠い昔、遣唐使らによってもたらされたものだという▼中国の古い史書「晋書」の王羲之伝は、書聖の筆遣いをこう讃(たた)える。「雲が飛び露が結ぶようにきれるかにみえてまた連なり、鳳(おおとり)が羽ばたき竜がわだかまるよう」。そして「眺めてはつきることがない」と(『王羲之』岩波現代文庫)▼見つかった模本は縦25・7センチ、横10・1センチ、24の文字が3行にわたって書かれている。千数百年も前に海を渡り、時を超えてきた麗筆のつらなりに、一つの小宇宙を思ってみる▼この模本が、長く小野道風(おののとうふう)の書と見られてきたというのも面白い。柳に飛びつく蛙(かえる)の逸話で知られる平安中期の書家である。22日から東京国立博物館で「書聖王羲之」展が始まる。墨と筆と漢字の文化圏。その歴史と豊饒(ほうじょう)に思いをめぐらせながら、足を運んでみるもよし。
2013年1月12日(土)付
 青春のとき、夢もあれば不安もある。〈難しいと言われて燃える夢があるいつか作る機械の義手を〉。広島の工業高校2年大畑遼真(りょうま)君が詠んだ。長崎の農業高校3年芦塚俊介君は〈柿や蜜柑(みかん)栗などザルに盛られてる就活の僕もザルに盛られる〉▼毎年この季節、東洋大学から届く「現代学生百人一首」を楽しみにしている。26回目の今年は全国から約5万4千首が寄せられたそうだ。どんな時代でも若さは宝だと、つくづく思う▼〈過ぎてゆく高二の夏を止めたくて朝顔一つ押し花にする〉鈴木亜矢子。青春の逃げ足はいつも速い。〈朝早くカーテン開けて光合成力満ちたらさぁ出かけよう〉高1、唐澤春奈▼政治に向く目に風刺がまじる。〈弟がテレビを見ながら僕に問う今年の総理は誰がなるのと〉高2、正木雄介。ネット時代を見る目も冷静で的確だ。〈「詳しくはウェブで」とうたうCMは情報社会の格差広げる〉高1、木村紗和音(さわね)▼家族のありがたみは家を出てわかる。〈「おかえり」がこんなうれしい言葉とは初めて知った寮に入って〉高2、高橋香那。遠くで働く親を思いやって〈四季のない異国の父へ秋便り庭の紅葉(もみじ)の押し葉のしおり〉高3、井上裕衣(ゆい)▼年若いほど発想は自在だ。〈えんぴつがくるりくるりとダンス中白いステージ中間考査〉中3、下迫仁子(ひろこ)。さて試験の結果は?小学生の部に〈そよ風にたんぽぽみんな言っている種(たね)をたく配してちょうだい〉6年、本木万葉(まよ)。読み終えて、春に一歩近づく気がした。
2013年1月13日(日)付
 小学5年、いや6年か、小遣い銭で初めて買ったレコードがザ・タイガースの「銀河のロマンス/花の首飾り」だった。聴き込んだので、今も詞が出てくる。その何倍も夢中になった元少女たちは、吉報にときめいたことだろう▼昭和40年代前半、グループサウンズ人気の頂点にいたこの5人組が、デビュー時の顔ぶれで再結成されるそうだ。ジュリーこと沢田研二さん(64)が、ソロの舞台で「全員の気持ちがやっと一つになりました」と発表した。12月に東京などで公演する▼日本武道館での解散コンサートから42年、芸能界から最も遠くにいたのが、ドラム担当のピーこと瞳みのるさん(66)だ。故郷の京都で定時制高校に復学、慶大に進んで中国文学を学び、慶応高で漢文などを教えた。復帰の誘いには背を向けてきた▼「かつての名前に頼った再結成では意味がない。メンバーのその後を加えて未来に発信すべきだ」と自著にある。同世代に元気を、上下には刺激を届けたいと、日中両語で「老虎再来」なる歌も作った▼「シーサイド・バウンド」「モナリザの微笑(ほほえみ)」「君だけに愛を」。ヒット曲を聴き直せば、日本が若かった頃の息吹が耳元に満ちる。こちらも青かった▼ホテルなどで団塊世代の同窓会が盛んと聞く。学年名簿に故の字が交じる60代である。戦後の起伏を越えてきた身を労(ねぎら)い合い、倒れた友をしのぶ時か。振り返って、また前を向く。この世代の青春は、幸いにも和洋ポップスの黄金期。応援歌には事欠かない。
2013年1月14日(月)付
 年を重ねると、月日の流れがどんどん速くなる。楽しい時が駆け足なのは常としても、退屈な時間まで大股である。物の本によれば「心の時計」のせいらしい▼子どもには未知の行事や出来事が次々と訪れ、心の時は細かく刻まれる。だから時間がゆっくり進むように感じる。大人になると胸躍るイベントが減り、加齢で代謝も鈍り、心の時計は緩慢になる。つまり実際の時の流れを速く感じる、というわけだ▼新成人はどんな時を刻んできたのだろう。生を受けた1992年度は、バブル後の不況が鮮明になる時期。ゆったり流れた「子ども時間」は、世に言う「失われた20年」に重なる。その不遇を、彼らは負担増として実感するのかもしれない▼「大人になるということは、歴史と出会うこと。歴史に出会うとは、社会を見いだすことでもある」。そう説くのは、社会学者の佐藤健二さんだ。過去を感じ直し、現在を位置づけ直し、未来を選び直す。自分がどんな歴史に織り込まれているのかを問う営みだという▼20歳の救いは、未来を選び直せることである。衆院選で初の一票を投じた人もいよう。夏の参院選では皆が投票できる。進んで社会と関わり、もの言う大人になってほしい▼失われた歳月を経て、国の借金は1千兆円に迫る。あずかり知らない重荷を背負わせるのは忍びないが、新成人は引き換えに、自らの暮らし向きや国の将来を左右する権利を手にする。その使いよう一つで、「大人時間」はいくらでも密になる。
2013年1月15日(火)付
 雪を詠んだ名句は多いが、俳人片山由美子さんの一句も忘れがたい。〈まだもののかたちに雪の積もりをり〉。しんしんと降る雪が、ものみなを白く埋めていく。しかし郵便ポストにせよ公園のベンチにせよ、まだものの形は判別できる――▼下手な説明など不要な秀句だろうが、きのうの「大雪」の図にふと浮かんできた。首都圏では珍しい降りになり、東京の西郊外にある拙宅の辺りでは、みるみる世界が白くなっていった。小ぶりの植木鉢など、雪に埋もれて早々とその輪郭を失った▼東京が白くなるたびに騒ぐのも気がひけるが、影響は多々出た。電車は止まり、高速道路は走れず、国立競技場で予定されていた全国高校サッカーの決勝が延期になった。転倒などによる事故も、少なくないようだ▼犯人は、列島の南岸を通った低気圧である。関東などの平野部に大雪をもたらす典型的な形だ。地上気温が2~3度以下なら雪になる。メートル単位の雪と暮らす北国の人には申し訳ないが、「成人の日の大雪」として記憶されるかもしれない▼思えば、雨に対する受け止めは日本各地でさほど違いはない。10ミリの雨はどこに降っても「10ミリ」だろう。しかし雪は違う。10ミリの雨は雪だと約10センチになるが、雪国は平気でも暖地ならずいぶんな騒ぎになる▼連休明けの今朝、慣れない足元には十分に注意を払いたい。頭の上にも、屋根や看板、樹木などから落雪がある。雪はやんで空は青くても、甘く見るのは禁物である。
2013年1月16日(水)付
 化粧も飲食も、あれやこれやの傍若無人も、通勤電車で色々見てきた。これは何日か前に初めて見た。といっても顔をしかめる行為ではない。調理に使うような使い捨てタイプのビニール手袋をはめて、女性がつり革を握っていた▼30代半ばとおぼしき人でマスクもつけている。感染予防だろうと想像はつくが、うつらぬ用心か、うつさぬ気配りか。ともあれ注意深い人だと思っていると、傍らで、マスクなしに号砲一発のくしゃみを放つ人がいた。細心と野放図が入りまじる、風邪の季節の人模様である▼巷(ちまた)ではノロウイルスが下火になり、インフルエンザがじわり流行期に入ったようだ。本紙地域面には注意喚起の記事が目立つ。テレビの情報番組にも、戯画化されて目のつり上がった悪相の「ウイルス」が日々登場する▼受験生やご家族はピリピリしていよう。センター試験に関する資料を見ると、3年前は約500人がインフルで追試を受けたそうだ。せっかくの合格祈願が風邪の神に蹴散らされるのはつらい▼人は生涯に200回ほども風邪を引くと、『かぜの科学』(早川書房)という本にある。軽い「風邪っぴき」も含めてだが、延べ5年ばかり熱や咳(せき)、喉(のど)の痛みや鼻水などに耐える計算になるらしい▼招かれないのに来た客は帰るときに一番喜ばれる。その筆頭格だろうが、症状が引いても数日は人にうつす恐れがあるという。仕事で試験で「あした寝込めない」人は多い。用心を助ける気配りを、共有の心得としたい。
2013年1月17日(木)付
 体制に抗し、タブーに挑む姿は、烈々と火を噴くように見えた。口をつく言葉も激しい。そんな大島渚さんを支えていたという言葉を知って、納得した覚えがある。「深海に生きる魚族のように、自らが燃えなければ何処(どこ)にも光はない」▼ハンセン病を背負って生きた戦前の歌人、明石海人(あかしかいじん)の歌集の前書きに出てくる。大島さんは19歳のときにこの一語に出会った。以来胸に畳んできたと、かつてアエラ誌で読んだ。言葉通りにあかあかと燃えた、80年の生涯だった▼映画監督になるとは、夢にも思わなかったそうだ。松竹の助監督試験を受けたとき、映画がワンカットごとに撮られるのも知らなかった。採用5人に2千人の応募があったというから、ファンは採用担当者の眼力に感謝しなくてはならない▼松竹の小津安二郎ら巨匠に反旗を翻したのはよく知られる。「喜怒哀楽」にたとえれば、小津映画が「哀」なら大島さんは「怒」の作風だろう。1960年代は、映画がテレビにホームドラマ調を譲り始めた時代でもあった▼妻の小山明子さんによれば、結婚前の5年間に360通の手紙を交わしたそうだ。その1通に「世界に通用する監督になって、君をカンヌ映画祭に連れて行く」とあった。約束はしっかりと果たされた▼「愛のコリーダ」「日本の夜と霧」――大島映画の数々は「問題作」と呼ばれてきた。その三文字こそが、自ら燃えた証しではなかったか。戦後という時代と切り結んだ映画人が、またひとり去って行く。
2013年1月18日(金)付
 世界初のジェット旅客機は英国で作られ、「コメット」と呼ばれた。1952年に華々しく就航したが、2年後に不可解な連続空中分解事故を起こす。原因はわからず、謎につつまれた▼徹底した調査で、金属疲労が浮かび上がる。高い空を飛ぶジェット機は客室に与圧し、着陸すれば戻して「膨らんでは縮む」ことを繰り返す。音速に近い高速もあって機体に負担がかかり、惨事に至ったのだった。技術が未知の領域に踏み込むときのリスクとして、語り継がれる話である▼新鋭機にとっては、あらゆるものが「未知の領域」になる。試験飛行を重ねて改善を加え、何年もかけて就航させる。それでも初期故障は出るものだが、ボーイング787は度を超して目立ち、安全性に黄信号がともった▼高松空港に緊急着陸し、緊急脱出した129人は青くなったに違いない。非常のとき車や鉄道なら停止できるが、飛行機は空で止まれない。全機運航停止は当然の措置だろう▼空を飛ぶという発想は、もし自然界に鳥がいなかったら、湧かなかったかもしれない。飛ぶ鳥の出現は1億年よりも前という。長い長い時間をかけて飛行を研ぎ澄ましてきた。片や人間は、引力に逆らう技術を手にしてたった百余年である▼コメットの事故のとき、英首相チャーチルは「謎の究明のためには費用のことも手間のことも考えるな」と言ったそうだ。鳥ならぬ空の新参者、ここは謙虚に、徹底して、新鋭機を調べ直したい。安全を万全に高めてほしい。
2013年1月19日(土)付
 「星の王子さま」を書いたサンテグジュペリは飛行機乗りでもあった。サハラ砂漠に不時着し、奇跡の生還をした体験をつづった「人間の土地」で戦争について述べている。「なぜ憎みあうのか?ぼくらは同じ地球によって運ばれる連帯責任者だ、同じ船の乗組員だ」▼そして「新しい総合を生み出すために、各種の文化が対立することはいいことかもしれないが……憎みあうにいたっては言語道断だ」(新潮文庫)。しかし、彼が空を翔(か)けた北アフリカの現状はそのヒューマニズムから遠い▼アルジェリアの人質事件は、イスラム武装勢力がむき出しの獰猛(どうもう)さで牙をむいた。軍は急襲に打って出たが、人質救出作戦なのか過激派殲滅(せんめつ)作戦なのか。手荒く攻め急いだと思(おぼ)しき情報の片々が、現地から伝わってくる▼この国では1990年代の内戦で10万人以上が落命したという。互いの遺恨は深い。近年は近隣国の治安も危うく、砂漠を走る「パリ・ダカールラリー」は南米に舞台を移した▼犯行グループは隣国マリへの仏軍の介入停止を求めていた。サハラ周辺の国々の旧宗主国フランスは、サンテグジュペリの母国でもある。この人はスペイン内戦を取材中に民兵らの手に落ちたことがある。命がルーレットに弄(もてあそ)ばれていると感じたそうだ▼生きて戻れたのは彼我(ひが)の間に「人間に対する敬意」が取り戻されたからだと書き残した。アルジェリアからの情報は厳しさを増している。一人ひとりの無事を祈るしかないのが、もどかしい。
2013年1月20日(日)付
 敗戦5日後、ソ連軍が南下する樺太から最後の引き揚げ船が出る。1500人がひしめく船内に、3人の子を連れた母がいた。船は稚内経由で小樽に向かう途中、魚雷で沈んだ。母親を船酔いにし、稚内で下船させたのは相撲の神様なのか。色白の末っ子は、名横綱大鵬になる▼納谷幸喜(なやこうき)さんが、72歳で亡くなった。母が生地の北海道から樺太に渡り、ウクライナ人と出会ったのも縁だろう。その父親とは戦中に離別、少年時代は道内を転々とし、重労働で家を支えた▼大量の薪を割り、ツルハシで道を直し、スコップで砂利をすくう。険しい山に苗木を植え、柄が背丈ほどある鎌で下草を刈った。腰を入れて体全体で鎌をひねる動作は、得意技のすくい投げにつながる▼32回の優勝は別格だ。ライバル柏戸の剛に対して柔、自在な取り口で受けて強かった。対戦相手は「柏戸は壁にぶつかる感じ、大鵬は壁に吸い込まれる感じ」と振り返る。その姿、その所作、静止画にたえる横綱だった▼子どもが好きなものを並べて「巨人、大鵬、卵焼き」と言われた全盛期、巨人と一緒は面白くなかったらしい。「有望選手を集めれば勝つのが当たり前。こっちは裸一貫なのに」と。晩年、若手の没個性や、稽古量の乏しさをよく嘆いた。「日本は豊かになりすぎた」▼貴乃花が土俵を降りて、きょうで10年になる。大鵬、貴乃花、白鵬。美しく強い綱の系譜はまだ伸びるのだろうか。相撲を取らずとも、ただ見とれていたい力士が少なくなった。
2013年1月21日(月)付
 命の重さは同じでも、悲しいかな、その量り方は一様でないらしい。アルジェリアの天然ガス施設へのテロ事件は、政府軍の性急な作戦により、日本人を含むとみられる人質20人以上が亡くなる惨事となった。企業戦士らの受難に言葉もない▼国情を知り尽くす会社でも、異国の辺境で働くからには危険がつきもの。商いとはいえ、現地に良かれとの思いが士気を支えてもいただろう。それぞれ息子で、夫で、父でもあった命が、乱暴に「外国人人質」とくくられ、砂漠に消えた▼約10カ国にまたがるサハラ砂漠は、アフリカの3分の1、中国ほどの広さがある。人類の知恵と根気を試すように、熱砂の下には豊かな資源が眠る。幸いの、そして、災いのもとである▼北アフリカから中東に及ぶ「アラブの春」。体制のタガが緩み、砂漠はテロリストの楽園と化しているそうだ。金づるは誘拐の身代金、麻薬や武器の密輸と聞く。イスラム武装組織の実体は、聖戦をかたる山賊といえる▼無法者に対するのは、基幹産業と威信を守りたい国家。冷たい歯車二つに巻き込まれた生身は、どうにも無力だ。人質を無視したかのような制圧劇は、人命より重いものがある国の現実を語る▼30人を超す武装勢力も殺された。同情の余地はないが、憎しみは彼らの肉親に受け継がれ、国境をまたいで報復の連鎖が始まろう。背景には深い貧困と、天然資源を民の幸せに生かせない失政がある。出口なき混迷に、サハラを渡る熱風のような焦燥が募る。
2013年1月22日(火)付
 「家族は悲しみを抱きながらも仕事をし、食事を摂(と)り、時に泣き、笑い、生きてゆかねばなりません」。57歳の夫に自死で先立たれた女性の手記である。「でも日々の何気(なにげ)ない生活の中で、突然襲ってくる悲しみがあります。皿洗いをしている時、洗濯物を取り込んでいる時……」▼遺(のこ)される者に済まないと思うなら、踏みとどまる望みもある。死ぬ覚悟を転じればいくらでも出直せるはずだ――これらは、自殺を知らないゆえの小理屈だという。未遂者によれば、何やら黒いものに追われて、それどころではないらしい▼去年の自殺者が15年ぶりに3万人を割り、2万7766人に減ったそうだ。とはいえ日に76人。61年ぶりに4500人を切った交通死の、まだ6倍を超す▼希望は東京、神奈川、大阪などの都市圏で、予防の試みが効き始めたことだ。健康や生計に悩む人と専門機関を、役所の窓口でつなぐゲートキーパーが好例だろう。社会全体で「気づき」「頼れる」環境づくりが続く▼おととい101歳で亡くなった詩人、柴田トヨさんの「くじけないで」に、次の一節がある。〈陽射(ひざ)しやそよ風は/えこひいきしない/夢は/平等に見られるのよ〉。ずっと若い人が、同じ感性を持てぬ理由はない▼人間には、自らいたわればトヨさんのように、100年を超えて輝く力が備わっている。くじけずに全うする天寿は、愛し、愛された者への小さな花束ともなろう。心まで冷える冬は、誰にも巡り来る日だまりを飛び石にして。
2013年1月23日(水)付
 あの頃、みんなの関心は明日の国情より今日の胃袋だった。終戦の夏には各地にヤミ市が現れ、農家への買い出し、物々交換が広まる。配給頼みでは飢えかねない▼猛烈なインフレに見舞われた復興期は、物価の番人、日銀の見せ場でもあった。経済全般に君臨し、存在感から法王と呼ばれた一万田尚登(いちまだひさと)総裁の時代である。マッカーサーとも渡り合う無二の経済人は、歴代最長の8年半を務めた▼一万田の命日だった昨日、日銀は初めて、政府との共同声明で2%のインフレ目標を打ち出した。無期限の金融緩和で政権を支えるという。政府からの独立が身上の中央銀行ながら、退任前の白川総裁が譲った印象だ。無条件降伏とは言わないが、異例の声明はポツダム宣言に重なる▼安倍首相は「画期的な文書、経済政策の体制変革」と自賛した。アベノミクスによれば、日銀といえども危機下では政府の道具らしい。年2%の物価高を見込んで、家や車を前倒しで買う人がどれだけ出るか。脱デフレは消費者心理と懐具合にかかる▼米国ではオバマ大統領が2期目に入った。お互い財政赤字にあえぐ政権。友を思いやる余裕はなく、為替相場などで利害がぶつかることもあろう。まずは自力で、輸出と内需を立て直すほかない▼初代ローマ皇帝の座右の銘に「ゆっくりと急げ」がある。コツコツやればサクサク進む、といった意味か。飢えずとも、敗戦時に並ぶほどの岐路である。使えるものは使い、試せる手は試したい。自重しながら。
2013年1月24日(木)付
 旅行会社に勤めるS氏(38)は定期健診で糖尿病の疑いを指摘された。精密検査で治療不要と分かったが、彼は以後、受診そのものをやめてしまう。「結果が出るまで、同僚と飲みに行っても楽しくないし、仕事にも集中できない。あんなストレスはこりごりです」と▼『健康診断の「正しい」読み方』(吉田和弘著、平凡社)にある話だ。健診で何か見つかり、働き盛りに「病身」のレッテルを貼られるのも怖かったという。だが、できる人こそ丈夫で長持ちしてほしいのが会社の本音である▼コンビニ大手のローソンが、健診を受けない社員と上司のボーナスを減らす新制度を、春から採り入れるそうだ。労使合意の「罰金制」により、社員3500人の完全受診を目ざす▼受診の催促(年3回)を無視し続けると、翌年度のボーナスが本来の支給額から15%カットされる。上司も管理責任を問われて10%減、勧められた再検査をサボっても削られるという▼予防医療を担う職場健診は、年1回以上が労使に義務づけられている。ただ、多忙などを理由に受けない人もいて、ローソンの昨年度の受診率は84%だった。ちなみに、朝日新聞の東京本社は昨秋が93%。日頃の不摂生を案じての高率にも思える▼健診を受けると健康になる、なんてことはない。エックス線撮影の被曝(ひばく)など心身の負担も伴うけれど、その功は罪に勝ろう。毎年の義務、というより権利を捨てては、望んでも受診しにくい人に申し訳ない。S氏、お元気だろうか。
2013年1月25日(金)付
 水晶占いが「2問で1万円」と聞いて、客が「ちょっと高くないか」と問う。占師は「はい高いです。では二つ目の質問をどうぞ」。その抜け目なさ、その手際……。自民党の、電光石火の「先祖返り」を目の当たりにし、笑えぬジョークを思い出した▼早手回しの復古は、経済再生の手順に鮮明だ。厳しい財政下で脱デフレを急ぐにあたり、産業界と公共事業への深い「理解」がのぞく。まずは大企業や地方の建設業者に元気になってもらい、やがて民の懐が温まるのを待つ構えである▼税制改正では、消費増税の埋め合わせを求める自動車業界の意向をくんで、自動車取得税が廃止される。あおりで減収となる地方自治体の悲鳴も聞き入れ、自動車重量税は専ら道路につぎ込むらしい▼使途を道路に限る特定財源は、ムダな工事の温床と批判され、麻生政権で一般財源になった。まさか「道路族の財布」までよみがえることはない、と信じたい▼大多数の道路は暮らしや商いに役立っている。トンネル惨事が教える通り、その安全には手入れが欠かせない。大綱も「維持管理・更新等のための財源」とするが、囲い込んだ金には浪費がつきもの。永田町や霞が関で使う「等」の字は曲者だ▼去年の貿易赤字が過去最大の約7兆円となった。富と人口が減る国を内から支えるには、何はさておき、働き手への応援歌を奏でるべきだ。族議員の懐メロを聴いている時ではない。「高くつかないか」。占師ではなく、水晶玉に問うてみたい。
2013年1月26日(土)付
 海外の任地から降り立ち、入国審査に進む時の「帰郷感」は忘れがたい。冬であれば、あちらでは拝めない高い空が楽しみだった。こぎれいな到着ロビーも、日本語の広告もうれしかった。そうした感慨とは無縁の帰還もある▼アルジェリアでテロに遭った方々が、政府専用機で羽田に降りた。過半は棺(ひつぎ)に横たえられて……。給油地のフランクフルトを経て17時間。この遠さが、熱砂のガス田開発にかけた男たちの、覚悟と情熱を語る▼日揮の社員ら、現地の日本人17人のうち10人が落命した。最後にご遺体が確認され、専用機に間に合わなかった新谷(あらたに)正法(ただのり)さん(66)は同社の最高顧問、出張中の悲劇である。身元確認の決め手が指輪の刻印だったと聞いて、愛妻家に合掌した▼10人を助ける手立てはなかったか。むごい結末を受け、反省と対策が語られている。友好国と通じてテロ情報に強くなる、アフリカ支援を広げる、そして自衛隊に邦人救出を担わせる、などだ▼自衛隊は今、現地の安全を確かめないと出せない。そこで安倍政権は、危なげな地にも送り、邦人を守れるようにする法改正に動くらしい。自衛隊が操る政府専用機の活用は、「普通の軍隊」への露払いにも見える▼むろん、テロ攻撃への対応は企業の手に余る。では米英仏のように、重武装の特殊部隊を待機させておくか。これも論外だ。丸腰と重武装の間に正解があるとも限らない。誰より意見を聴くに値し、述べる権利もあった10人は、祖国から永遠(とわ)の旅に出る。
2013年1月27日(日)付
 畑で野菜を作っていると、土は働き者だとよくわかる。猫の額ほどの借地ながら、夏に冬に多彩に実らせてくれる。ひとくちに野菜畑と言っても季節によってたたずまいは違う。緑の盛んな夏に比べて冬の畑は地味でつつましい▼大根も白菜も、一心に冬日を浴びているように見える。寒い畑でじりじりと育ち、土の滋養をたっぷり取り込んでこそ味わいが増すと、いつか記事で読んだことがある▼白根の長い根深葱(ねぶかねぎ)も冬の畑の光景だ。抜いてきた太いのを親指ほどの長さに切る。表面が黒く焦げるまで網で焼いて、表皮をむく。かつお節としょうゆで舌にのせれば、芯までとろけ出してくる。飯に酒に、しみじみと味は深い▼冬の野菜は寒さを感じてきゅっと身を守り、甘みが増すのだという。だが今季は寒くて縮こまりすぎたのか、高値の報が各地から聞こえてくる。白菜など、産地によっては昨季の倍近い値で鍋好きを悩ませる▼〈寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ〉杉田久女。しんしんと雪の降る夕べや、北風が裸木を鳴らしていく夜は、ものの煮える音がごちそうになる。鍋を囲むうれしさは、たぎる音と立ちのぼる湯気。たっぷりの冬野菜なしには始まらない▼筆者の作る畑も、この冬は霜柱の立つ日が多い。素人が言うのも何だが、人事を尽くしてなお天気を頼むしかないのが農業の厳しさだろう。気象図には縦縞(たてじま)が並び、日本海側は荒れた空模様が続いている。雪の深さを案じつつ、寒明けまでの日数(ひかず)を指折りかぞえてみる。
2013年1月28日(月)付
 大ニュースではないが、驚いてしまう記事がある。3年前にこんな記述があった。ある人が幼稚園で講演したとき、若い母親に「お茶って自分の家で作れるんですか」と聞かれた。「はい」と答えると、彼女はこう言ったそうだ▼「私のお母さんがお茶を作っているところ、見たことがない。いつもペットボトルのお茶を飲んできた」。彼女はどうやら、お茶を「いれる」という言い方も知らないらしい▼一昨年も似た記事があった。料理教室の先生に、急須を「これは何ですか」と聞く受講生がいたという。だが、そうした例が驚くにあたらないのを、きのう東京で読んだ記事で知った。日教組の教研集会で「今の高校生は日本茶の入れ方を知らない」という報告があったそうだ▼福岡県立高校の家庭科教諭が生徒にアンケートしたら、冬に家で飲むお茶を「急須でいれる」と答えたのは2割しかなかった。授業では急須を直接火にかけようとする生徒もいたという▼おそらくは「粗茶ですが」や「茶柱が立つ」といった言葉も知らないのだろう。市販の飲料は手軽でいいが、文化や歴史をまとう「お茶」と無縁に子らが育つのは寂しい▼「客の心になりて亭主せよ。亭主の心になりて客いたせ」と言ったのは大名茶人の松平不昧(ふまい)だった。庶民もお茶でもてなし、もてなされる。いれてもらったお茶は、粗茶でも心が和むものだ。コンビニエンス(便利)と引き換えに大事なものをこぼして歩いているようで、立ち止まりたい時がある。
2013年1月29日(火)付
 失意の時を経て、ひと回り大きくなる人もいるし、芸や信念に磨きがかかることもあろう。何によらず復活の舞台は感動的だ。その点、安倍首相の所信表明演説は思いのほか薄味だった▼理念より実務か、特段の高揚はない。わずかに、時代がかった言辞が目立つ程度だ。「病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間」が、「国家国民のために再び我が身を捧げんとする決意の源は、深き憂国の念にあります」と▼20分弱の短さ、ヤジはなく、時おり拍手が起きる。衆院は3分の2以上が与党席だから、どこか党大会のよう。下野した民主党の消沈に思う。チェック能力は大丈夫か▼政権の色をより端的に語るのは、大枠が固まった予算案だろう。防衛費を11年ぶりに上積みし、自衛官も8年ぶりに増員する。尖閣の海空で続く中国の挑発への、これぞ「憂国の念」である▼頑張る人は報われる。この基本が揺らぐことへの「憂国」も大きいらしい。生活保護の支給額が、働く貧困層の消費支出より多いといった矛盾だ。勢い余って過去の物価下落分まで削る結果、特に子育て中の保護世帯には痛い減額となる。自助を促すというには、手荒すぎないか▼憂国首相にとって通常国会は、ご本人言うところの「過去の反省」を試す場となる。ここまでは経済対策を軸に安全運転で、株価も支持率も高い。夏の参院選までは世論をにらみ、車線の真ん中を行くつもりと思われる。さて、右端で待つ支持層がどこまで辛抱できるか。
2013年1月30日(水)付
 海を渡って幸せだったのかどうか、しわに埋もれた目は多くを語らない。東京·井(い)の頭(かしら)自然文化園のアジアゾウが66歳になり、日本で飼われてきたゾウの長寿記録を塗り替えた▼はな子は1949(昭和24)年、2歳でタイから来た。戦後初の輸入ゾウとして人気を呼んだが、まず、ねぐらに忍び込んだ酔っぱらいを、次に持病で倒れた職員を死なせてしまう。荒れる巨体は鎖につながれ、処分を迫る声も出た。幸い、新しい飼育係が鎖を解き、人間不信を癒やしてゆく▼その名は、戦中の猛獣処分で餓死させられた上野動物園の花子を継ぐ。餌ほしさに芸を見せる花子の悲話と同様、はな子の波乱の半生も童話や手記になった。ゾウの威容はそれ自体ドラマチックだ▼平和の世、優れた飼育技術が行き渡り、今や動物園も長寿社会である。輸入規制により仲間を増やしにくい種もある中、人気者の老境をどこまで見せるか、施設の悩みは深い▼コアラの国内最高齢は現在、91年に生まれた大阪·天王寺動物園のミクで、人間なら100歳。握力が衰え、たびたび木から落ちるため、通常120センチという止まり木の高さを約半分にした。樹上の主らしからぬ姿は忍びないと、非公開で余生を送る▼大阪生まれのミクのように、自然界を知らぬまま天寿を全うするものも多い。動物たちはただ生きているだけで、命や地球に関わる深遠なメッセージを発し続ける。むろん人間についても多くを教えてくれる。愚かさと弱さ、そして優しさも。
2013年1月31日(木)付
 「生きているうちに見つけて下さいまして、ありがとうございました」。最年長の75歳で芥川賞を受けた黒田夏子さんの弁に、表現者の意地を見た。人の世の無常を思う1月の言葉から▼「文(ぶん)!こっちだ帰ってこい!」。アルジェリアでテロに倒れた内藤文司郎(ぶんしろう)さん(44)の亡骸(なきがら)が故国に戻り、母さよ子さん(69)が棺(ひつぎ)に叫んだ。弟の二郎さん(41)は「肉体は帰ってきたけれど、魂はまだ向こうにある気がして」▼阪神大震災から18年。尼崎市の小村勝志さん(70)は、次女(当時22)を失った。6カ月の身重だった。「孫が生まれていれば高校を卒業する頃。毎年こうしないと、大きな忘れ物をした気になる」。神戸の東遊園地で竹灯籠(どうろう)に火をともし、慰霊碑で娘の名を確かめた▼「貧困、自殺、犯罪。問題の根っこはつながっている」。犯罪学者の浜井浩一さん(52)が語る。「それは心の問題ではなく、社会に居場所があるかないかの問題。反省と違い、更生は一人ではできません」▼体罰問題と向き合う義家弘介(よしいえ・ひろゆき)文科政務官(41)は、高校で退学を経験した。「少年時代の一時期、私は暴力と身近な世界に身を置いた。暴力から希望が生まれないことは、実体験として分かる。残るのは後悔と悲しみだけです」▼60年前に芥川賞に選ばれた安岡章太郎さんが、92歳で亡くなった。同世代の文学者、ドナルド・キーンさん(90)は「会えばよく一緒に笑っていたのを思い出します」。長短はあれど、人の記憶に笑顔一つで残る人生でありたい。
「宇宙は空間に拠って私を包み一つの点のように呑み込むが、私は考える事に拠って宇宙を包む。」パスカル
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