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朝日新聞・天声人語 平成二十四年(十一月)

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发表于 2012-11-1 20:34:09 |显示全部楼层
2012年11月1日(木)付
 千年近くも昔、たいそう読書好きの少女がいた。世は平安時代、書物は希少だ。少女は等身大の仏像を造り「あるだけの物語を全部読みたい」とひたすら願う。菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)と呼ばれる人で、その「更級(さらしな)日記」に愛書ぶりが詳しい▼上洛(じょうらく)し、憧れの源氏物語を全巻もらうと天にも昇る心地になる。「間仕切りの中に伏して一冊ずつ読む喜びといったら、后(きさき)の位も比ではない」と書き、「昼はずっと、夜は目の覚めている限り、灯を近くにともして」読みふけった。そんな少女が、喜んでいよう▼今年から、11月1日が「古典の日」になった。1008(寛弘5)年のこの日、源氏物語をめぐる記述が「紫式部日記」に初めて出てくる。それにちなんで法律で定めた。読書週間のほぼ真ん中、翌々日は文化の日と、日取りはいい▼文学の古典ばかりではない。音楽、美術、伝統芸能などを広くとらえて、歳月に朽ちない輝きに親しむ趣旨だという。汲(く)めども尽きない泉なのに、飲まず嫌いはもったいない▼とはいっても、とっつきにくいのが古典というもの。「桐壺(きりつぼ)源氏」という言葉があって、源氏物語を読み始めたが冒頭の「桐壺」の巻で投げ出すことを冷やかして言う。せっかくの日を尻すぼみにさせないために、親しみ、楽しむ工夫が大事になる▼源氏よりは通読者が多いだろう「徒然草」が言っている。〈ひとり、燈(ともしび)のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる〉。古典の醍醐味(だいごみ)を、古典が教えてくれる。
2012年11月2日(金)付
 手前味噌(みそ)めいてしまうが、朝日小学生新聞がなかなかおもしろい。硬派のニュースも結構あり、先日は1面トップで震災の復興予算を取り上げていた。直接関係のない事業にも使われてやり玉にあがっている問題だ▼奇妙さは子どもにもわかりやすい。文房具を買うのにもらったお金でお菓子を買う。それはまずいと誰でも思う。おかしな言い訳をすれば親の怒りに油を注ぐことも想像がつく。だが悲しいことに、日本の政と官の現実である▼反捕鯨団体の妨害活動への対策(農水省)やら、国立競技場の補修(文科省)やら、えっと驚くのが色々ある。法務省は受刑者の訓練用にショベルカーを購入していた▼言い訳に「受刑者の7割が被災地での就労を希望している」とアンケート結果を示した。ところがそれは、問題になってから慌てて実施したというから呆(あき)れる。法の元締が下手な「アリバイ作り」をやってどうする▼それもこれも、もとはといえば復興基本法が文言(もんごん)巧みに「流用」を認めているためだ。政治家をラッセル車にして霞が関は省益を図り、血税という蜜壺(みつつぼ)に巧妙にストローを突っ込む。共存共栄の体質は、国家的な危機にも変わらないらしい▼そして、より大きい蜜壺にも舌なめずりの目が光る。消費増税は財政再建と社会保障のためだったはずが、抜け目ない付則が加わって、諸々(もろもろ)の事業が割り込む気配だ。大借金をゆくゆく背負うのは小学生新聞の読者世代。未来からの怨嗟(えんさ)の声は、加齢による空耳ではない。
2012年11月3日(土)付
 早起きの身に、よく晴れた晩秋の夜明けは気分がいい。きのうは藍色の天空に居待(いま)ち月が浮かび、明けの明星が皓々(こうこう)ときらめいていた。暁を覚えぬ春とは違って、眠気はすっきり心と体から抜けていく▼そんな澄み切った明け方、丘の上の一本の銀杏(いちょう)から、ぎんなんが一斉に飛び降りる童話を宮沢賢治は書いた。木をお母さん、黄金(きん)色の実をあまたの子に擬し、落下を「旅立ち」と描く筆はやさしい▼子らは靴をはき、外套(がいとう)をはおって旅の支度をする。冷たい北風がゴーッと吹くと、「さよなら、おっかさん」と口々に言って枝から飛び降りる――。黄金(きん)の雨が降るような描写を読み直すうち、ふと読者から頂いた便りを思い出した▼去年の今ごろ、作家の故三浦哲郎さんの文を拝借した。郷里の寺の銀杏が、「毎年十一月のよく晴れた、冷え込みのきびしい朝に、わずか三十分ほどで一枚残らず落葉してしまう」。これを文学的誇張であろうと書いたら、そういうことは他でもあると、何人かが教えてくださった▼ある人は「すさまじい光景だった」と表し、ある人は「解脱(げだつ)するかのように」と例えていた。裸になった木の下には厚み10センチほどの絨毯(じゅうたん)が敷かれたそうだ。風もなく、憑(つ)かれたように散る光景を思えば、樹木の神秘に粛然となる▼立冬が近く、けさは各地で一番の冷え込みになるらしい。豪壮な黄葉は今日はどの辺りか。夜はぎんなん坊やをつまみに、深まる秋に浸るもよし。おっかさんの銀杏の木に、感謝を忘れず。
2012年11月4日(日)付
 50年前の全日本自動車ショーで、トヨタはドアのない車を世に問うた。大衆車を2人乗りの未来風スタイルに仕立てた、パブリカスポーツだ。戦闘機のように、屋根ごとずらして乗り降りする仕組みで、2台のみの試作だった▼今はなきこの車を、今年夏、「愚かな車好き」を自称するトヨタOBらが復元した。残る図面や写真を元に、5年がかりで組み上げたそうだ。同好のひいき目を割り引いても、それだけの価値はある▼パブリカスポーツの斬新さは、ショーの話題づくりに終わらず、1965年のトヨタ・スポーツ800に結実する。時代を画した車は好き嫌いが分かれるものだが、愛称「ヨタハチ」を悪く言う人を知らない▼後に80点主義と評される会社にしては珍しく、技術陣が「まじめに遊んだ」一作である。さすがにドアはついたが、優れた空力デザインと軽量が非力を補い、評論家の徳大寺有恒氏によればミズスマシのごとく走った▼以後、国産車は大きく華美になるばかり。小型スポーツカーは定着しなかった。くねる道を人車一体で駆ける楽しさを知らずに、車社会は老いへと向かう。内に成熟市場、外には過当競争。車のみならず日本メーカーをさいなむ虎狼(ころう)である▼名だたる家電ブランドの苦境も、内外の消耗戦の結果だ。抜け出すには、青いが熱かった半世紀前に立ち返るのも手だろう。「こんなものができたら面白い」と。今昔の車好きを夢中にする遊び心こそ、ものづくり再生のカギに思えてならない。
2012年11月5日(月)付
 紙上では小欄の右ではじける「しつもん!ドラえもん」が記念の千回を迎えた。この小さな扉からニュースの森に入り、気づけば「皆勤(かいきん)」という読者もおられよう。扉を開けたくなる絵を日々描き下ろす、藤子プロの力業(ちからわざ)にも脱帽だ▼「千つながり」で続けたい。「千と千尋(ちひろ)の神隠し」などで知られるアニメ監督、宮崎駿(はやお)さんが文化功労者に選ばれた。コメントが出色だった。「映画は常に、文化を破壊し、損ねる可能性を持っています。いつも危うい道のりに立っていると自戒し、浮かれないことにします」▼感性に真っすぐ届く作品群は、ひとつ誤ると退廃に転ぶ。映像の持つ力を知り尽くす人ならではの戒めだろう。宮崎アニメや藤子マンガほどのパワーはないが、「危うい道のり」を行く恐れは当方とて同じである▼同僚と分担するこのコラムも6年目にして、それぞれ千本を数える。自戒のリストには「書き写すに足るか」が加わった。千の節目、さらなる精進をお約束する▼京都大学で学生さんに話す機会があった。こんな顔でも小一時間さらしただけで、「親しみがわいた」との感想を多数いただいた。どうやら小欄は、お堅い仙人風が帳(とばり)の向こうで筆を執るイメージらしい▼食わず嫌いもあろうから、小さな好奇心を新聞へと誘(いざな)うドラえもんは格好の入り口だ。「こたえ」を探したら、情報の海に遊ぶもよし、論争の山で悩むのもいい。言葉を踏みしめて分け入るほどに、トトロの森のように深く、豊かな世界が待つ。
2012年11月6日(火)付
 「象牙の塔」にも例えられる権威や閉鎖性のゆえか、大学は往々、皮肉めいて云々(うんぬん)されてきた。評論家の大宅壮一は、戦後の新制大学を「駅弁大学」と揶揄(やゆ)した。駅弁を売っている駅のある所は大学があるという、急増ぶりへの当てつけである▼その後、「女子大生亡国論」というのもあったし、筆者の学生時代には「レジャーランド化」とたたかれた。むろん、もっと高尚な批評もあって、三木内閣時代に民間から文部大臣になった永井道雄は「いまの学校は西洋の中世末期の教会に似ている」と評したそうだ▼中世の末期、教会は金集めのために免罪符を乱発した。教会が栄えて宗教は衰えた時代といわれる。永井のたとえは、免罪符を「卒業証書」に置き換えて、学校のありようを憂えたものであったらしい▼似たような憂いに、田中真紀子文科相が駆られるのは分かる。いまや大学は全国で800近くに増え、一方で少子化が進む。私大の4割は定員を割って、「広き門」を入ってくる学生の学力はおぼつかない▼それは分かるが、来春開校予定の3校を不認可にしてしまっては「暴走大臣」だろう。一般論で一理あっても、3校に落ち度はない。ちゃぶ台返しをリーダーシップと勘違いしては困る。将来のための変革を言うなら、正面から変えてほしい▼昨今、大学は就職予備校のようになり、本来の教育が空洞化しているともいう。憂える人は多いはずだ。一石投じたのを良しとして、覆水を盆に返す手も、なくはなかろう。
2012年11月7日(水)付
 とある車のテレビコマーシャルを見てヒヤリとなった。すると天野祐吉さんが、本紙連載の「CM天気図」でやんわりとそれを突いていた。派手によそ見をしながら運転し、あわやぶつかる寸前で自動的に止まる、という宣伝である▼「飛び出すな、車は急に止まれない」なんていう交通安全標語は、これからは余計なお世話になるのかもしれない、と天野さんは言う。その一方で心配する。「安全性が増したことで運転がお粗末になったりすることが、ないとは言えないだろう」▼車の安全性の向上は著しい。自動ブレーキは前方の物体を感知して、時速30キロ以下ならぶつからずに止まるそうだ。装着車は割高ながら、売れ行きはいい▼ブレーキが間に合わないとき、自動でハンドル回避する装置も開発途上にある。まぶたの動きなどで居眠りを検知する装置は、将来は自動で路肩に止める機能も加えるという。他にもあれこれ、至れり尽くせりの助っ人たちだ▼だが、世には「ジェボンズの逆説(パラドックス)」というのがある。省エネ技術が進むと逆に消費が増える、と述べる説だ。平たく言えば、低カロリーのお菓子があると、気を許して食べ過ぎ、かえって目方が増えるという皮肉。車も、せっかくの安全技術が野放図な運転を呼ぶようでは困ってしまう▼今の時代、ケータイにせよスマホにせよ運転中の誘惑は多い。プロが飛ばす旅客機でも自動操縦装置を過信した事故はままある。逆説の落とし穴は意外に広い。そう心得るのが賢明だ。
2012年11月8日(木)付
 洋の東西を問わず、有言実行の政治は難しい。ケネディ元大統領のスピーチライターだったソレンセン氏が、歴代米大統領の就任演説をすべて調べて、こう皮肉っている。「史上最低の大統領たちが最高に雄弁であることが判(わか)った」。負けていたらオバマ氏も、その仲間入りだったかも知れない▼むろんオバマ氏は最低の大統領ではないが、雄弁が独り歩きしてきた印象は否めない。米大統領は2期目を任されてようやく一人前ともされる。次の4年でアメリカをどう舵(かじ)取りするか、真価が問われることになる▼人種も文化も多彩な3億人が暮らす国に、大統領選挙は4年に1度の求心力をもたらす。人々は候補者に言葉を求め、胸に響く言葉によって連帯を深め合う。「民主主義の祭り」と呼ばれるゆえんだ▼しかし、今回は史上最悪の中傷合戦と言われた。民主と共和、二者択一を迫る悪口(あっこう)のシャワーを浴びて米社会の分裂は深い。勝利宣言で「激しい戦いは国を深く愛すればこそ」と語ったオバマ氏だが、祭りのあと、傷をふさぐのは容易ではない▼オバマ氏の雄弁に戻れば、日本人の胸をゆさぶったのは「核兵器なき世界」だった。もう次の選挙の心配がない2期目には、思った行動がしやすいという。ぜひ広島と長崎を訪れてもらえないか▼就任前から「情けない大統領ならいくらでもいる。真に偉大な大統領になりたい」と語っていた。その願望も昨日の勝利で首がつながった。雄弁という木にみのる果実を、見せてほしい。
2012年11月9日(金)付
 月を指(ゆび)さしているのに、肝心の月を見ないで指ばかり見ている。つまり、目の先のものにかまけて、ことの本質に目が向かない。分かりやすいからか、似た例えは世界にあるようだ。親鸞にも「汝(なんじ)なんぞ指をみてしかも月をみざると」のくだりがある▼高名な宗祖と暴走大臣を並べるのも何だが、田中真紀子文科相をめぐる騒動にも同じことがいえないか。非難の声は高く、野党からは問責決議の声も上がる。だが政争の具にするばかりでは、指の先の月を見ないことになる▼たとえば、大学を新設するプロセスも一般にはわかりにくい。認可が下りる前から建物が造られて、募集のPR活動が行われる。これを奇異に感じる人も多いのではないか▼大学の設置認可制度の手引を文科省が作っている。見ると、「新規参入のハードルは格段に低くなっている」「不認可とされる事例は極めてまれ」といった文言がある。これでは乱立もやむを得なく思われる▼そして今、総定員が進学希望者より多い全入時代である。独自の試験をせずにセンター試験ですませ、中には学力審査がない大学もある。仮に学生の頭数がそろえばいいという了見なら、学ぶ者のための大学か、経営者のための大学か、わからなくなる▼迷惑きわまる真紀子台風だが、暴君キャラをあげつらって終わり、にはしたくない。政治もメディアも、「文教ムラ」の空にかかる月を、一度よく吟味する必要があろう。教育は国の基(もとい)だから、くすんだ月であってはいけない。
2012年11月10日(土)付
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2012年11月11日(日)付
 望遠鏡の中の火星は色あいが変わるため、そこには季節があり、カビやコケが反応しているとも考えられた。生き物への期待が膨らんだのは1965年、マリナー4号が初接近した時だ▼米航空宇宙局(NASA)の研究所に留学していた大島泰郎(たいろう)さんは興奮した。「地球外生命の姿を見る最初の人類になる」と。しかし届いた画像は隕石(いんせき)の衝突跡で荒涼とし、皆を落胆させた。大島さんは、手違いで月の写真が出たかと目を疑ったそうだ(『火星に生命はいるか』岩波書店)▼赤い荒野に「命の痕跡」を追う旅は続く。夏に火星に降りた米探査機キュリオシティが、名に恥じぬ、好奇心をそそる仕事を重ねている。土はハワイの玄武岩に似ると突き止め、水が運んだらしい丸い石も見つけた▼かつては海や川に恵まれ、命を保てる環境があったのではないか。六つの車輪による放浪はカメの歩みながら、一歩一歩が未知との遭遇になる▼タコ似の火星人は望めないが、「命のかたち」は地球でさえ私たちの想像を絶する。例えばコケなどに棲(す)む緩歩(かんぽ)動物(クマムシ)は、ひどい乾燥、数百度の温度変化、真空、強い放射線に耐え、宇宙空間にさらされても生き延びるとされる。火星に出没した生命も「常識外れ」に違いない▼マリナーが鳥の目なら、今度は虫の目。まさに緩歩ではい回り、動くものがいたという動かぬ証拠をつかんでほしい。孤独な訪問者による「孤独にあらず」の知らせは、人類を少しばかり謙虚にするように思う。
2012年11月13日(火)付
 もう立冬は過ぎたけれど、中国の古い詩をひとつ思い浮かべた。〈秋風(しゅうふう)蕭蕭(しょうしょう)として人を愁殺(しゅうさつ)す〉と始まる。秋の風がひゅーひゅー吹いて、人を愁いに沈ませる、と。そのあと〈座中の何人(なにびと)か誰(たれ)か憂いを懐(いだ)かざる〉などと続いていく▼この秋風を「解散風」に置き換えると、民主党議員の胸の内に思いがいたる。政界はここにきて、いよいよ風が吹きだした。だが、野田内閣の支持率は本紙調査で2割に届かない。加えて党が再分裂含みときては、誰か憂いを懐かざる、となろう▼片や、解散を引き出したい自民党は「北風」から「太陽」に転じた。審議拒否といった強硬策ではなく、赤字国債法案などに協力して環境を整える。風で吹き飛ばすより、温めて上着を脱がせようという策が、じわりと効いてきたようだ▼夏以来このかた、「近いうちに解散」の「近いうち」をめぐって不毛な反目を見せられてきた。内外順風の時ではない。民意を問う仕切り直しがずるずる延びては、国の舵(かじ)取りもままならない▼今の政治を、戦前の2大政党時代になぞらえる人が多い。民政党と政友会は党利党略の争いを繰り返した。首相はころころ代わり、閉塞(へいそく)感から民心は政党を離れ、軍部が政治を牛耳ってしまう▼決められない政治は苛立(いらだ)ちをもたらす。だが、威勢よく決めればいいものでもない。よく決めて、ほどよく立ち止まる。そんな熟思の政党がいい。気を取り直し、あらためてポケットの一票を研ぎ澄ます、この歳末になりそうだ。
2012年11月14日(水)付
 汚れのない瞳がこちらを見つめてくる。写真家の長倉洋海(ひろみ)さん(60)から頂いた来年のカレンダーに、しばし見入った。アフガニスタンで南アフリカで、チベット高原で――、世界の子どもたちの月替わりの笑顔は、地上の星を見る心地がする▼長倉さんは長年、紛争の地や、きびしい暮らしを送る人々を撮ってきた。子どもに向けるまなざしはやさしい。「僕にとって写真は、希望を写し込むもの」と言う。小さな瞳から希望が消えれば、それはもう子どもではない▼だが、ゆゆしいことは多い。あまり知られていないが、今年は「国連識字の10年」の最終年になる。読み書きの教育も受けられぬ人を減らす区切りの年に、パキスタンでは少女銃撃という蛮行が起きた▼以前、インドの辺境へ支援に入った日本の女性が、現地の文字を書いたら驚かれた、と言っていた。外国人が書くからではない。「女が字を書く」からだった。貧困や因習で、とりわけ女子が就学できない理不尽が世界に残る▼字が読める母親の子は、乳幼児で死ぬ割合がかなり低くなると、先の本紙「私の視点」の寄稿に教えられた。識字は人が人らしく生きる拠(よ)りどころ。尊厳と言っても過言ではない▼長倉さんの写真を眺めていると、谷川俊太郎さんの詩が浮かぶ。〈子どもはなおもひとつの希望/このような屈託の時代にあっても……〉。学校に通えない子は地球上に6700万人を数える。数字は国際社会の恥であるとともに、大人の大罪を訴えてやまない。
2012年11月15日(木)付
 少年時代に金魚を飼った思い出を、作詞家の故・阿久悠さんが書いている。金魚が死ぬたびに庭の土を掘って墓を作ったそうだ。周りの子らも同じだったが、「猫や犬が死んだ時のように大泣きする子はいなくて、黙々と土饅頭(どまんじゅう)を作ったものである」▼そんな土饅頭が累々と並ぶ光景が、民主党の輿石幹事長の脳裏には浮かぶのだろう。一昨日の会合で「どじょうは泥水でも生きていける。金魚が水槽から飛び出したら死んじゃう」と語った。解散総選挙で落選が続出することへの強い懸念、ととらえられた▼どじょう宰相こと野田首相への牽制(けんせい)でもあった。解散の「刀」を抜きにかかる首相を、右腕である幹事長が羽交い締めにする。首相を脅かす強い吹き返しが党内に渦巻いていた▼首相が16日解散に踏み込んだのは、「野田おろし」を絶つ狙いもあったろう。覚悟を示さなくては党内がもたない。そうして久々に、道場の試合ではなく、野天で斬り合うような党首討論を見た▼いま信を問えば、民主党という金魚鉢が寂しくなるのは避けられまい。だが政権の土饅頭ができたとして、大泣きしてくれる国民はどれだけいよう。かくも政治は停滞した。動かすために仕切り直しはやむを得ない▼党首討論で首相が明かしていた。子どものころ通知表に「野田君は正直の上に馬鹿がつく」と評されたそうだ。民主党が通知表を受け取るのは来月の16日。内憂外患の募る師走、日本の将来にとってゆるがせにできない、一票の行使となる。
2012年11月16日(金)付
 文化勲章も受けたし、国民栄誉賞にも輝いた。でも、自分にとっての森光子さんは松の湯のおかみさん。そう思う人は多いのではないか。昭和が薫るテレビドラマ「時間ですよ」での主演は、日本のお母さんを見るようだった▼だが、そう思われることが、子のないご本人にはくすぐったかったそうだ。子ども時代は家庭の温かみを知らずにきたが、「ホームドラマの中で家族に恵まれた」とも言っていた。いい「家族」に囲まれてこその、お母さんの存在感だったようだ▼下積みの長い人だった。大阪の舞台で、劇作家の菊田一夫に見いだされた話は伝説だ。菊田が空港までのハイヤーを待っていた3分間に、8分ほどの即興ものを演じていた森さんを偶然に見た▼しかしシンデレラ物語ではない。東京へ誘いつつ菊田は言う。「君は越路吹雪のようにグラマーじゃない。宮城まり子ほどの個性もない。だからずっと脇役でいくんだね」。迷い悩み、それでも跳び込んだのは、本人の心意気を抜きに語れまい▼一代の当たり役、菊田の脚本による「放浪記」は演劇史上に輝く。41歳で主役の林芙美子役をつかみ、89歳まで演じた。人の世は移ろっても、人気は移ろうことなく、上演は2017回を数える▼「げたを足にひっかけて、ぽーんと放って、鼻緒が上か下か、どう出るかわからない。私、明日というものは、こういうものと思っています」と本紙に語っていた。上を向いた鼻緒をひとつ舞台に残して、92歳の幕が静かに下りた。
2012年11月17日(土)付
 どこか野田首相を詠んだようだと、3日前から思っている一句がある。〈泥鰌(どじょう)浮いて鯰(なまず)も居るというて沈む〉永田耕衣(こうい)。どこかの古池の様子でも想像すれば、とぼけた味わいに心がゆるむ▼自らをドジョウに見立てつつ、野田首相の身中にはナマズもいたようで、乾坤一擲(けんこんいってき)、いきなりの解散に永田町は揺れた。野党のあわてぶりに「奇襲解散」の呼び名はどうかと言う同僚がいた。カーキ色めいて無粋だが、当たっていなくはない▼「鳩(はと)に豆鉄砲」の格好になった第三極の動きが、とりわけ慌ただしい。減税日本代表の河村名古屋市長は、日本維新の会、みんなの党、太陽の党を含めて「四つドカンと一緒になるのが、僕らは面白い」と、リンゴの量り売りのようなことを言っていた▼合従連衡は政治の常だが、政策は二の次、ドカンと固まるから「さあ買って」では荒っぽすぎる。うわついたブームより政権公約の誠実さが大事だと、民主党の総崩れぶりが私たちに教えてくれる▼フランスのある風刺辞典が、「約束とは選挙の時に使われる小銭」と皮肉たっぷりに定義していた。こんな軽さに何度もだまされて、有権者はもう昔ながらのお人好(よ)しではない▼原発や消費税、TPPでの違いを「ささいなこと」と片づけて「敵の敵は味方」式に組む。そこに信を置けるだろうか。どこがどこと組むにせよ、拙速の運びが心もとない。「奇襲解散」は第三極をゆさぶり、時間で追いつめる。ナマズの思惑通り。そんな声も聞こえてくるが。
2012年11月18日(日)付
 紅葉(こうよう)は山海の恵みにも似て、はしり、さかり、なごりの各段を踏む。緑があせ、赤黄の錦が乱れ、色が散り敷かれる。落葉(らくよう)の三段跳びだ。なごりを惜しもうと、山梨・長野の県境を歩いた▼標高1300メートル。八ケ岳連峰の南に広がる清里高原は、さすがに人影まばらで、避暑地の初冬を独り占めした心地にさせる。季節はずれのリゾートも悪くない▼戦前、原野だった清里にキャンプ場を開いた米国人ポール・ラッシュは、富士を望める立地にこだわったという。南東の空が白む時刻、その山が薄墨のシルエットで浮かんだ。八ケ岳の主峰赤岳、南アルプスの甲斐駒ケ岳や北岳など、雪を薄く頂いた山並みが一瞬、紅に染まる▼ふもとのカラマツ林が黄金(こがね)色に煙っていた。風にあおられ、枝を離れた小針がヤッケに降り注ぐ。錦秋(きんしゅう)の主役だったモミジは、あらかた路傍に吹き寄せられていた。〈手に拾ふまでの紅葉(もみじ)の美しき〉和田順子▼昼夜の温度差、程よい湿度と陽光が色を磨くという。葉の彩りは残暑から秋冷への急坂を転げ、時雨(しぐれ)に洗われて深まる。秋が短かった今年は、木々の見せ場も重なりがちだ。東京の街路樹はケヤキ、サクラ、ユリノキあたりが散りぎわの芸を競う。真打ちのイチョウも盛りが近い▼初霜や初氷の便りが相次ぎ、ひと雨ごと、有無を言わせず寒さが厳しくなる。早い遅いはあれど、毎年、ホップ、ステップ、ジャンプの順で巡る季節がやけに頼もしい。一歩進んで二歩下がるような、人の世を見るにつけ。
2012年11月19日(月)付
 髪形をいじるのは心機一転の表れでもある。日本維新の会の橋下徹氏が、おでこを出す正統「保守型」に変えた。この勝負髪で衆院選に挑むという。37歳上の石原慎太郎氏を新代表に迎え、しおらしく従う覚悟らしい▼合流は第三極の受け皿を広げ、既存政党や官僚支配への不満をさらう狙いとみえる。両氏の合意文書には「強くてしたたかな日本をつくる」と表題がついた。「弱くてお人よしの日本」は耐えがたいと▼片や石原氏に気を使い、「原発ゼロ」の語は消えた。政策より大同団結、小異は捨てたというが、コーヒーと紅茶を混ぜたようなドタバタ感が漂う。色が似ていればいいというものではない▼なるほど、コーヒー党、紅茶党の独自色より、候補者の調整が先に立つのが小選挙区制だ。野合との批判に、石原氏は「民主党や自民党が人のことを言えるのか」と反発、橋下氏も「趣味嗜好(しこう)まで同じなら北朝鮮」と開き直る▼とはいえ、地方分権や行政効率に重きを置く橋下氏の現実主義と、米中なにするものぞの石原流がどう混じり合うのか。みんなの党や減税日本とも組むとなれば、昔の民主党顔負けの「選挙互助会」だ▼石原氏がほれたと公言する橋下氏は、政界でいう「じじごろし」に違いない。新代表を最強のリーダーと持ち上げ、ヘアスタイルを変えた。「何が目的か分からない年の差婚をした、したたかな女のよう」。きのうの東京紙面にあった、山本貴代さんの見立てに納得した。その縁の吉凶は知らない。
2012年11月20日(火)付
 新聞紙上のたった2行のほめ言葉が、無名だった画家を励まして、押しも押されもせぬ存在に導いた話がある。シルクロードの絵で知られる故平山郁夫さんは20代の終わり、体調の悪化をおして「仏教伝来」を描き、日本美術院展に出品した▼数日して、名高い美術評論家だった河北倫明の院展評が新聞に載る。記事の末尾で「おもしろい味がある」とだけほめていた。平山さんは歓喜する。何度も読み返しては、励みにして描き続けた。「ボクシングでいえばダウン寸前に救われた」と▼その2行がなければ、のちの輝かしい画業はなかったかもしれない。そう思えば、ほめる言葉は大切だ。実際のところ、ほめられることで運動技能は向上するのだという。日本の科学者グループが先ごろ実験の結果を発表した▼キーボードを打つ速さで調べた。1回目を打ち終わった後にほめられた人たちは、2回目の結果が20%上昇した。「ほめて伸ばす」ことの科学的な妥当性が示されたと、グループは分析している▼人間の脳は、ほめられることを報酬と感じ取るそうだ。平山さんとキーボードの実験は、かけ離れているようだが根は同じだろう。芸術も日常生活も、なべて人の営みである▼「三つ叱って五つほめ七つ教えて子は育つ」などと俗言にいう。なかなかの塩梅(あんばい)と言うべきか、中学生も、親にほめられることの多い子は自己否定感が低いという調査結果がある。ほめ上手にして叱り上手。誰もそうありたいと願うところだが、さて。
2012年11月21日(水)付
 ミャンマー(ビルマ)と聞いて連想する楽器は、日本人なら竪琴だろう。その国に、「水牛のそばで竪琴を奏でる」ということわざがあるのを、あちらの短編小説の翻訳集で知った。親身な忠告にも聞く耳を持たない、困った頑迷さを言う▼軍事独裁下のミャンマーは、頑迷が徹底していた。たとえば2年前、自宅軟禁の続くアウンサンスーチー氏が65歳を迎えた。誕生日を前にオバマ米大統領は解放を求めたが、応じる気配はまるでなかった。それが今、この変わりようである▼米大統領の初訪問を、人々は歓呼で迎えた。民主主義の守護者を任ずる国から大統領が来たからには、もう圧政への後戻りはない。民主化へのお墨付きと、市民は受け取ったことだろう▼しかし、スーチー氏は訪問を尚早とも案じたそうだ。「変革の最も困難な時期は成功が見えてきたとき。蜃気楼(しんきろう)に惑わされないよう十分気をつけなければいけない」と釘を刺す。オバマ氏と写る写真の、少し困ったような笑顔は、その表れだったろうか▼スーチー氏の父アウンサン将軍は「建国の父」と慕われる。そして今、「民主化の母」となった娘を、生まれたばかりの幼子(おさなご)を立派に育てる試練が待つ▼〈軟禁を解かれし女人(にょにん)たおやかに髪に花挿(さ)す疾風の中〉長田裕子。だが現実の政治に手を染めれば、民主化の象徴のような純粋を保つのが難しい局面もあろう。内外に対して「スーチー」という存在であり続けねばならない苦労を思う。疲れず折れず歩んでほしい。
2012年11月22日(木)付
 いまの時代なら誰にたとえられるか、斎藤緑雨(りょくう)は明治時代に毒舌の評論で鳴らした。簡潔な警句の数々は切れ味抜群、〈涙ばかり貴(とうと)きは無しとかや。されど欠(あく)びしたる時にも出(い)づるものなり〉というのもあってニヤリとさせられる▼鳩山由紀夫元首相が引退するとの報道に、緑雨の警句の一つが胸に浮かんだ。〈無邪気は愛すべく、無責任は憎むべし。されども無邪気は、無責任の一種なり〉。1世紀も前の言葉だが、鳩山さんのこのかたの言動を突くような冴(さ)えがある▼不信を決定づけた普天間問題の独り相撲も、「よかれと思って」やった結果だった。首相を辞めたときは引退を表明したのに撤回した。あれやこれや、どこか宇宙人的な「無邪気」が抜けきらずに、政治をかき回すことが目立っていた▼タカ派的な主張が幅を利かせる今、友愛を説く鳩山流の理想主義は貴重だ。リベラルの灯台であってほしいのだが、民主迷走の象徴になってしまった。そしてまた、お騒がせの引退である▼鳩山さんの顔が大きく刷られたマニフェストは総崩れの状態になり、次を問う政権公約が各党から出始めた。今の多党乱立を見れば、「鳩山版」は2大政党時代の懐かしい記念品になるかもしれない▼〈正義は呼号すべきものなり、印刷すべきものなり、販売すべきものなり。決して遂行すべきものにあらず〉。緑雨の反語的皮肉は、「正義」を「公約」に置き換えれば各党への牽制(けんせい)となろう。ひとりの政治家を見送りつつ、よく吟味したい。
2012年11月23日(金)付
 数字の1が二つ並んで、「いい」と語呂合わせができる11月は「いい○○の日」がいくつかある。解散後の騒がしさに忘れていたが、きのうは「いい夫婦の日」だった。だが、熟年離婚やら物騒な言葉が胸に浮かんで、首筋が寒くなる日だとこぼす同僚もいた。人はさまざまだ▼本紙歌壇の投稿歌から、選外ながらユーモアたっぷりの秀作を紹介する「朝日歌壇番外地」に、以前こんな一首があった。〈相手選ぶ眼(め)の有るわれと無き妻の結果が出た五十年目の春〉久保小八。おとぼけとおのろけ。ごちそうさま、と言いたくなる▼一般論だが、夫婦の暮らしは夫の側にいささかの「負い目」があるようだ。40代以上に聞いたあるアンケートによれば、「将来配偶者を介護したい」と答えたのは女性36%に対し、男性は55%と多かった▼数字は色々に解釈できようが、男の「罪滅ぼし」の意識もまじる気がする。そして、「有料老人ホームに入るなら同じ部屋に入りたい」は男性82%なのに、女性は66%。これは首筋がちょっと寒い▼数字は色々に解釈できようが、男の「罪滅ぼし」の意識もまじる気がする。そして、「有料老人ホームに入るなら同じ部屋に入りたい」は男性82%なのに、女性は66%。これは首筋がちょっと寒い▼虚実は分からないのだが、作家の花田清輝(きよてる)が一文を残している。パリの墓地に二つのお墓が並んでいて、先にできた墓にはこう書いてあるそうだ。「ジャック・ジュラン――お前を待ってるよ!」▼横の墓にはこう書いてある。「ジャクリーヌ・ジュラン――はい、まいりましたよ!」。ひるがえって昨今は、夫と一緒の墓をいやがる奥さんも多いそうだ。すきま風の手当ては、早め、こまめが肝要になる。
2012年11月24日(土)付
 損得に揺れない身の堅さはすがすがしい。戦国の昔、合戦で大手柄をたてて徳川家の最年少の部将になった成瀬正成(まさなり)に、豊臣秀吉が目をつけた。けた違いの俸禄を示して、「あの若武者をくれ」と家康に迫ったそうだ▼やむなく家康が承知をすると、正成は大泣きした。「どうしても秀吉の家臣になれというなら切腹する」。それを聞いた秀吉は「家康殿は良い家来を持たれておる。目をかけて使われよ」と言って諦めた――磯田道史(みちふみ)さんの『歴史の愉(たの)しみ方』(中公新書)から拝借した▼平成の日本も戦国なみ、まれに見る多党乱立のうちに総選挙が迫る。それだけ「脱出ボート」が多いわけで、すでに幾人もが、主に民主党から乗り移った。理を感じる離党もあるが、損か得か、保身丸見えの遁走(とんそう)も目立って情けない▼個人に限らず、第三極の離合を見ても信義や信念が軽すぎないか。群像劇として眺めれば面白いが、AKBの総選挙とは違って国の明日がかかる。信を置ける人と党の吟味はゆるがせにできない▼金(きん)と見えた人が実はメッキだったり、逆に、鉛のように思われた人がいぶし銀の光を湛(たた)えていたりする。乱立にもまれて、人も組織も地金(じがね)は出やすい。すでに化粧のはがれだした人もいるようだ▼「織田がつき、羽柴がこねし天下餅、座りしままに食うは徳川」。3年前に天下餅を食った民主党は消化不良で日本の胃もたれは深刻だ。ここは口に苦くとも、健胃をしっかり促す良薬がほしい。留飲を下げる偽薬ではなく。
2012年11月25日(日)付
 ハンバーグとカレーライス。小4~中3を対象とした農林中金の調査によると、好きな夕食の「二強」はこのところ安定している。舌が肥える前だから、はっきりした味が受けるのだろうか。むろん大人にも人気のメニューである▼40年ほど前、美食の国フランスで「味覚を目覚めさせる授業」を始めたジャック・ピュイゼ氏によれば、味覚が大人びるのは10歳ごろから。幼児期は、甘くて軟らかいものを欲しがる。体に必要で、快く受け入れられるものを識別する新生児の舌を、子どもは継いでいるそうだ▼「イクメン」には遠かった当方、赤ちゃんの好物など見当もつかない。言い訳めくが、世には、生まれた直後に何を食べているのか判然としない生物が少なくないらしい▼孵化(ふか)して間もないウナギが、主にプランクトンの死骸からなるマリンスノー(海の雪)で育つことを日本の研究者が突き止めた。この魚、なじみ深い割には謎が多く、産卵地がマリアナ沖と判明したのも最近。幼き日の食性は不明だった▼ニホンウナギは絶滅が危惧されるまでに減り、卵から育てる工夫が急がれる。その難所である幼生の好物が分かれば、完全養殖がまた近づく。それは、世界のウナギの7割を食べる日本人の責任でもあろう▼甘辛くて軟らかく、骨がないかば焼きは、子どもの口にも合う。だが品薄の昨今、子連れでうな丼となれば散財である。世界に誇るべき味を末代につなぐため、卵から成魚、そして丼までの道をしっかり整えたい。
2012年11月26日(月)付
 自宅のはす向かいがコンビニで、冷蔵庫がわりに重宝している。めまぐるしい盛衰を映し、ここの店名は15年で3回変わった。徒歩3分ほどの間に、無休で競う同業が4店。道すがら、これほどのおでんを誰が買うのかと思う▼日本のコンビニが、10月末で5万店を超えたという。店を支える周辺人口から国内はすでに限界との説もあったが、消耗戦を勝ち抜いたところが増殖しているらしい▼コンビニは、独自の商品とサービスで若者の消費をリードしてきた。野菜を置く店も増え、遠出しづらい高齢者をつかんでいる。宅配便、公共料金、ATM、防犯の駆け込み寺……。生活スタイルの変化に即応し、先の大震災では、有事に頼れる社会インフラとしても見直された▼経営環境は厳しい。わが国の小売業は、縮む人口と胃袋を取り合う宿命だ。物を売るだけなら敵は多く、近くて便利は当たり前、我らお客の要求はきりがない。大手は全国を七つ八つに分け、おでんの味を変えているそうだ。おにぎりや弁当はさらに細かい▼〈コンビニのおにぎりコーナー早々と売切(うりき)れとなる田植えの季節〉内藤三男。農村や町はずれには、砂漠のオアシスのような店もあろう。旅先でなじみの看板を見つけ、助かったと思うことがある▼多機能ゆえの安らぎは、コンビニならではだ。食文化を壊すといった批判に耐えるには、深いところで消費者とつながり、味方を増やすほかない。四季に合わせ、行事をにらみ、100平米(へいべい)の知恵比べは続く。
2012年11月27日(火)付
 古い相撲ファンなら1961(昭和36)年の秋場所を忘れまい。優勝争いの末、大関の柏戸と大鵬がそろって横綱昇進を決めた舞台である。「柏鵬時代」を告げるその場所で、両雄を押し出した猛者がいた。突貫小僧と呼ばれた小結、前田川だ▼彼の殊勲が語り継がれる理由がもう一つある。柏鵬以外に全敗したことだ。伸び盛りとの対戦に精根を使い果たしたような2勝13敗。前田川は後年、「十両に落ちずに年59敗」という妙な記録も残した。長い相撲史は珍談奇聞に満ちる▼九州場所の日馬富士は、記録と記憶の両方に刻まれよう。新横綱への期待を裏切る9勝6敗。クンロクは弱い大関を腐す言葉で、およそ最高位の星ではない。終盤の5連敗も新横綱では例がないという▼反射神経に任せた日馬富士の取り口は、サーカスの味である。九州でも、綱渡りの土俵際に審判が「勝負あり」と勘違いし、相撲を止めてしまう珍事が起きた。速さは魅力でも、ドタバタは最高位にそぐわない▼慣れない土俵入りのストレスもあったはずだ。本人は「いい勉強になった」と強がるが、勉強はひと場所限りと願いたい。綱の重さに耐えながら、23度目の優勝を飾った白鵬の大きさを思う▼51年前、大鵬と柏戸が新横綱で迎えたのも九州場所だった。前者は13勝2敗で連覇、後者も12勝3敗と食い下がった。横綱の12勝は最低限の務めだろう。もはや降格は許されず、負けが込めば辞めるしかない。白い綱の冷感がしみる、非情な地位である。
2012年11月28日(水)付
 電卓をたたいて、意外に小さいと思った。滋賀県の面積に対する琵琶湖の割合である。県地図に開(あ)く青い大穴は3割を占める趣なのに、実は17%弱。淀川流域1500万人の水を賄う存在感が大きく見せるのだろう▼水がめの番人、滋賀県知事の嘉田由紀子(かだゆきこ)さん(62)が、卒原発を掲げて「日本未来の党」をつくる。京大在学中から琵琶湖を愛する環境社会学者でもある。若狭湾の原発群で大事故があれば、水源が汚染されるとの危機感が原点にあるらしい▼脱原発を訴える各陣営で、発信力が高そうなのは日本維新の会の橋下徹氏だった。ところが、石原慎太郎氏を代表に迎えるにあたり、橋下氏の歯切れは悪くなる。「仲間を失った」という思いが、嘉田さんの背中を押したようだ▼新党の動きに早速、小沢一郎、亀井静香、河村たかしの各氏ら、ひと癖ある政治家が呼応し始めた。誰の仕掛けか、生臭くもある。衆院選公示まで1週間、どこも「政策より議席」の実戦モードに入った▼雨後の竹の子の第三極はこれで、「強い日本」を志す維新の会と、嘉田さんを顔に、脱原発で手を握るグループに大別される。彼女が言う通り、福島の事故を受けた初の国政選挙で、原子力の未来がとことん論議されないのはおかしい▼かなりの国民が原発からの卒業を望んでいる。しかし、このまま票が分散しては、思いが政治に伝わらない。関西発が続くが、永田町の力学を離れて選択肢が増えるのはいい。琵琶湖が結ぶ絆も、その一つである。
2012年11月29日(木)付
 イチョウの黄葉が舞う歩道には、さすがにくたびれた姿が交じる。ダークスーツに白のシャツかブラウス。大学生が最後の1年ほどを託す、会社訪問用の勝負服である▼来春の卒業予定者の就職内定率(10月1日現在)が、前年より約3ポイント高い63%と発表された。水準はまだ低いが、2年続けての上昇だ。学生は有名どころにこだわらず、自分を生かせそうな中小にも目を向けているらしい▼女子の内定率が男子を上回ったのは、17年間の調査で2度目という。先輩の苦労を知るだけに、企業研究などの準備を周到に重ねてきたようだ。男子は数社だめだとシュンとなる、との観察もある▼あさってには企業と大学3年生の接触が解禁され、学生の就職戦線は二本立てとなる。下の代が動き始めれば、4年生の追い込み組には「一周遅れ」の焦りが募ろう。〈就活にやや疲れたる夜ならん迎えし犬に娘(こ)の甘えおり〉安達三津子▼4年生の未内定者は推計15万人。採用意欲は上向きながら、選ぶ目はなお厳しい。数十社も回れば己を否定された気にもなる。しかし何ごとも縁。50社だめでも、51社目の面接者が隠れた輝きを見抜くかもしれない▼週刊ダイヤモンドの最新号で、産業史に通じる一橋大大学院の橘川武郎(きっかわ・たけお)教授が語っている。「世間に良い会社と見られているところが、40年後も優良企業である確率は高くない」。そもそも、同じ勤め先で全うする人生は珍しくなろう。思い詰めず、振り返らず、顔を上げて社会に踏み込みたい。
2012年11月30日(金)付
 こんなに政党が生まれ、かつ消えた月はたぶんない。党員や綱領を欠いた、うたかたの止まり木を政党と呼べばの話だが。「ばか正直解散」で衆院議員が浮草になった、11月の言葉から▼「初めて本格的な政権交代が起こり、今はその実験の途中。政党間に差がないなかで小異を競う状況だと、いったんは多党乱立になる」。評論家の塩田潮(うしお)さんは、そこから二大勢力に結集していくと見る▼いくつかを「卒原発」で束ねた嘉田由紀子滋賀県知事が「びわこ宣言」。「重い責任を感じることなく、経済性だけで原子力政策を推進することは、国家としての品格を失い、地球倫理上も許されない」▼福島市の幼稚園主任、伊藤ちはるさん(40)が、園児を外に出せないつらさを福岡で報告した。「ナシ狩りもだめ、運動会、発表会など、これまでとの変化、変化、変化に、室内でどうするかの工夫、工夫、工夫でした。どうせやるなら楽しくと」▼「自然が許容する範囲でしか生きられないと気づいた」。被災地、宮城県南三陸町の後藤一磨さん(65)は広島大で講演。「文明への過信によって奪われたものがある。その一つが原爆投下。震災も忘れないでほしい」▼総選挙の意義を問われた前の防衛大学校長、五百旗頭真(いおきべまこと)さんは、苦い教訓として満州事変に沸いた世論に言及した。「社会が行き詰まり、もう耐えられないとなった時、新しいものなら何にでも飛びついてしまう傾向が日本にはある。ジリ貧を逃れ、ドカ貧に跳躍する病気です」
「宇宙は空間に拠って私を包み一つの点のように呑み込むが、私は考える事に拠って宇宙を包む。」パスカル
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发表于 2012-11-12 09:54:48 |显示全部楼层
原来还有这个贴呀11月10日的新闻大亮呀
崩坏ing
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自从那网down不下来好久没听过了..
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